「おとうさん」って言えるのに、「おかあさん」ってなかなか言ってくれなかったね。
だけど、小学校1年生の冬休みに「おかあさん」って呼んでくれました。
 そのとき、とっても嬉しかったのよ。D君、その時のことを忘れないように、書いておきます。
 3歳下の妹は「たかいたかい」が大好き。「おかあさん、たかいたかいして」って何度も何度も「たかいたかい」をしました。お姉ちゃんも「おかあさん抱っこ」、笑い声でいっぱい。でもそんな時もDは一人でくるくる回ったりして一緒に遊ぼうとはしませんでしたね。
 その日は私が洗濯物をたたんでいると、背中をポンポン。振り返るとお姉ちゃんと妹があなたの手を取って、「おかあさん」と言っている。
 「はあ~い」と返事をするとびっくりしたあなたの顔。「たかいたかい、しようか?」と、ちょっと「たかいたかい」。また洗濯物たたみをしていると、背中をポンポン。
「たかいたかい」の繰り返し。何回も同じことを繰り返して遊んだね。
 だけど、その日はDが一人で「背中ポンポン」ができるようになって、それから初めて「おかあさん」と言ってくれた。
すごく嬉しかったです。
あなたは、最初びっくりしていましたね。
 それまで私は、あなたがパニックにならないように、言う前や行う前に準備していたから、あなたは私を「自分の手」だと思っていたんじゃあない?あの日は、私を見てびっくりした顔をしていましたよ。私が「あなたの手」ではないことがわかったんですね。
「初めて顔を見た」っていう感じの不思議そうな表情でした。
それから、私のことを探したり顔を見たりしてくれるようになりました。お父さんもお姉ちゃんも妹もみんなで喜んでくれました。
「おかあさん」って呼ばれるって当たり前、って思っていたけれど呼んでもらえるのって幸せなことだったんですね。そのとき「神様、ありがとう」って心から感謝しました。
ずっと覚えておきますね。欲張りな私は、すぐに忘れてしまって、もっと、もっと色々なものが欲しくなりますからね。今あることに感謝するようにします。そうしないといつまでたっても幸せになれないんじゃあないかと思うからです。